漫画を使った英語勉強法
荘加 大祐(Daisuke Shoka)
ではでは、コンテンツ教材を順に掘り下げていきましょう。まずは漫画からです。
なお、このエントリーは以下のエントリーの続きなので、まだ読んでいない人はこちらを先にどうぞ。
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漫画で英語を勉強するとは
とりあえず、ピンとこない人もいるかと思うので、英語の漫画がどんな感じか紹介しておきましょう。こんな感じです。
(出典:Dragon Ball, Vol. 1 )
普通の教材では出てこないけど日常会話で必ず使う単語、中高生くらいでは意味をとるのに苦労する文法的な難易度、笑える内容と、このコマには「英語で漫画を読む」ということのメリットが凝縮されています。本当に最高ですね。
このように、基本的にはセリフが英語になっている漫画を読むだけです。では、これの何が素晴らしいのか、どのような点に注意して学習すればいいかを解説していきましょう。
コンテンツ教材としての漫画
僕の意見では、漫画はコンテンツ教材の頂点です。まずはここから始めることがオススメです。
まず、圧倒的に繰り返しやすいです。漫画好きなら、同じ漫画を何度も繰り返して読むことは何の問題もないでしょう。というより、単行本で買った漫画を一度しか読まないことの方が珍しいはずです。
しかも、時間効率もいい。人間は絵を瞬間的に理解できるので、漫画を読んでいるほとんどの時間はセリフの理解に使われています。また、読むのをとめて単語を調べたりするのに何の手間もかかりません。ドラマや映画だと、これが億劫になったりします。
また、文字コンテンツであり、簡単な英語が使われていることも特筆すべき特徴です。セリフを吹き出しに収めなければならない関係で一文が短くなりますし、基本的に漫画は子供向けですからね(医療系漫画などは別ですが)。
コンテンツ学習で最初にきついのは「ずっと英語に浸ること」です。英語を延々とインプットしていると、脳が疲れちゃうんですね。多分、最初は10分とか15分でグッタリしてしまうかと思います。この「グッタリするまでの時間」を引き伸ばして、そのうち何も感じなくなるようにするのが1つのゴールなので、文字コンテンツで、かつ内容が簡単というのはありがたいんですよ。
そんなわけで、漫画はダントツにオススメです。コンテンツ学習をやるか迷っている人は、まずは漫画から始めてみるといいでしょう。もちろん、あなたが漫画好きであることが前提条件ですが。
具体的な勉強方法
次に、具体的な勉強方法を説明します。基本的には自己流でやってもらうのがいいと思いますが、参考までに僕のやり方を紹介しておきますね。
初回は、調べた単語の履歴が残る電子辞書を手元に置いて読みます。漫画は繰り返し読むことが前提なので、分からない単語は最初につぶしてしまうわけです。
ただ、分からない単語をすべて調べる必要はありません。漫画にはネイティブしか使わないようなスラングや、辞書に載っていないような崩した表現が出てきます。こういう部分まで完璧に詰めようとするのは現実的ではないですし、時間がもったいないです。
あと、作品によっては誤訳が入っていることもあります。僕の読んだ中では、『のだめカンタービレ』はひどかったですね。“ai-kon”という単語が出てきて、なんじゃこりゃと思ったら、「合コン」の読み間違いでした(現在は修正されているかもしれません)。
そんなわけで、漫画で完璧に意味をとろうとすると、疲れちゃうと思います。感覚的な話ですが、90-95%くらいの意味がとれたら、そこで満足しましょう。
あとは、何度も繰り返し読むだけです。調べた単語が思い出せないときは、履歴機能を使いましょう。これなら単語を再度入力する手間がありません。
このとき、時間を測るべきです。①1冊読むのに何分かかるか、②どれだけ連続で読めるか、の2つの時間を記録しましょう。この時間が、自分の英語細胞がどれくらい育っているかの目安になります。
おそらく、最初は1冊読み切ることすら難しいはずです。しかし、繰り返すうちに何とか1冊読めるようになりますし、そのうちに2-3時間読んでも何も感じなくなります。こういう風に、自分の成長が数字で示されるとやる気が継続しやすいので、時間を測るといいですよ。もちろん、毎回やる必要はありません。
目安として、日本語で読むのにかかる時間の1.5倍くらいで読めるようになるまでは、繰り返す価値があると思います。ただ、内容に飽きてしまうこともありますので、ここは柔軟に運用してください。
あとは、調べた単語リストを定期的にチェックすることがオススメです。漫画では文脈や絵の補助があるので、調べた単語の意味を思い出すのが簡単です。ところが、単語だけを切り出されると意外と思い出せなかったりするのです。脳に別方向からの刺激を与えるという意味で、これもやりましょう。
作品の選び方
次に、作品の選び方を説明します。ここがキーポイントです。
まず、既に日本語で読んでいる、大好きな作品を選びましょう。特に、最初の1作は絶対にこの条件を満たす作品を選ぶべきです。
先ほども述べたとおり、コンテンツ学習の初心者には、「ずっと英語を浴びる」という行為そのものがしんどいです。ここでさらに、この単語が分からない、セリフの意味が理解できないのでストーリーが追えない、ということになってしまうと、コンテンツ学習を続けることができなくなってしまいます。そこで、最初の1作だけでも、記憶に頼ってセリフの内容やストーリーを補完できる作品を選ぶことをオススメします。慣れてきたら、日本語で読んだことのない漫画にチャレンジしましょう。
次に、バイリンガル版は絶対にやめておきましょう。英語版を読むべきです。
バイリンガル版とは日本の出版社から出ている英語バージョンの漫画のことで、コマの外に原書の日本語のセリフが付いているのが特徴です。このおかげで、英語で意味が分からないときに、即座に日本語を確認できるわけです。
これはメリットだと思うかもしれませんが、違います。僕の意見では、これはコンテンツ学習の主旨を台無しにするレベルのデメリットです。
前回のエントリーで述べたように、コンテンツ学習の主旨は英語にドップリ浸かって英語細胞を育てることです。しかし、バイリンガル版では視界に日本語訳が飛び込んでくるため、頻繁に思考が日本語モードに戻ってしまいます。これでは英語細胞を育てることはできないでしょう。
また、日本語があるせいで「訳が正しいのか」が気になってしまうことも問題です。英語だけなら「意味が理解できて、ストーリーが追えているか」だけに集中できます。
バイリンガル版を買うべきなのは、かなり英語レベルが低い人だけでしょうね。ただ、その場合はコンテンツ学習をするより基礎的な文法書や単語集に取り組んだ方がいいと思います。
最後に、これは議論の余地があるポイントですが、普段は電子書籍で漫画を読む人でも、紙版を買った方がいいと思います。僕自身、ほぼすべての本を電子書籍で買うほどの電子書籍ユーザーですが、これに関してはさすがに紙版に優位性がある気がします。
まず、漫画の電子書籍は、セリフの言葉にハイライトをつけることはできませんし、電子書籍リーダーによってはしおりもつけられません(たとえば、Kindle for Macでは無理でした)。
これだと、単語の意味を調べるときに紙版に優位性があります。まず、「大体このあたりのページだったな」という記憶に頼ってページを開くことができます。また、気にならないタイプの人なら、ドッグイヤーをつけたり、蛍光ペンを使ったりもできます。
なお、単行本に折り目をつけたり書き込みすることに抵抗がある人も多いと思います。僕もそのタイプなので何とも言いにくいことではありますが、学習教材だと割り切ってドッグイヤーや書き込みを入れた方が学習効率は高まるでしょう。
あと、漫画に関しては、目に入るところに置いてあるから読んでしまうということが結構あると思います。僕は受験生のときに、部屋にあった漫画をすべて隣の部屋に移しました。見えるところにあると読んでしまうからです。
今回はこの逆のケースですので、目に入るところに漫画を置いておくべきです。リビングに置いて、飽きるまで繰り返しましょう。この点でも、紙版に優位性があると思います。
まとめると、好きな作品の英語版を紙で読め、ということです。
購入方法
じゃあ、そんな漫画をどうやって入手したらいいんだよ、ということになるわけですが、とりあえずAmazonに関しては、英語名のタイトルを打つか、英語名のタイトルが分からないなら適当に翻訳して”english”、“manga”あたりのワードを加えれば見つかります。
- 『進撃の巨人』→「“Attack on Titan”」
- 『ドラゴンボール』→「“Dragon ball” + “english”」
- 『四月は君の嘘』→「“lie” + “April” + “manga”」
他サイトに関しては調べていませんが、同じようなやり方でみつからないなら、扱っていないということだと思います。
あと、「買う金はねーよ」という中高生もいると思います。その場合は、図書館をあたってみてください。図書館には英語の漫画が置いてあることが結構あります。読みたい漫画がなかったり巻数が歯抜けになっていたりしますが、そこは我慢するしかありません。もしくは、親にこのエントリーを読ませて、小遣いとは別の枠で予算をゲットしましょう。
オススメ作品
最後に、いくつかオススメ作品を紹介しておきますね。まずは鉄板のこの2作。
この2作品は、僕の英語力の根本を支えてくれたと言っても過言ではありません。留学直後に本屋で見つけて、鬼のように繰り返しました。特にドラゴンボールは日本語でセリフを暗記しているレベルで読み込んでいたので、非常にとっつきやすかったです。
しかも、今だとこの2作品はコスパもいいですね。3-in-1 editionなので、1冊あたりの価格が他に比べて低いです。
ただ、一般論としてはバトルものやスポーツもののコストパフォーマンスは悪いです。どうしても、大ゴマや絶叫が増えますからね。たとえば、ドラゴンボールは前半はまだいいのですが、サイヤ人編あたりからは本当にセリフが少なくなります。1冊あたりの英語量を追求するなら、日常ものや恋愛ものの漫画を選ぶべきです。まあ、基本的には好きな漫画を選べばいいんですけど。
日常ものだと、このあたりでしょうか。
のだめは、さっき書いたようにちょっと翻訳が雑です。ただ、ほとんど問題ないレベルですし、楽しく読めますよ。
僕は『四月は君の嘘』を英語で読んでいないのですが、単純に最高だったので入れておきます。ただ、“Your Lie in April”ってタイトルにしちゃうと、日本語タイトルの(おそらく意図的な)文法的な間違いからくる妙味が消えちゃってて、寂しいですね。
ではでは、今回は以上です。素敵な漫画ライフをお過ごしください。