どうしたら筋トレが成功するのか
荘加 大祐(Daisuke Shoka)
もう僕たちに、筋トレしないという選択肢は残っていません。筋肉がすべてを解決することはテストステロンさんによって明らかになってしまったからです。筋トレはやるもの。ここに議論の余地は残っていないのです。
しかし、町にマッチョが増えたかというと、僕はそうは思いません。少なくとも僕の周りで言えば、ジムに入会した人やプロテインを買った人はいても、明らかに体つきが変わった人は1人もいないです。僕も、これまでに2回ほど筋トレに挫折しました。
ただ、僕は3回目にして筋トレに成功しました(と言っていいと思います)。久しぶりに会う人には、ほぼ確実に「なんかデカくなった?」と言われます。実際、過去に買った服はサイズが合わなくなり、すべて捨てるハメになりました。
このエントリーは、3回の筋トレ挑戦を通じて、僕が学んだことのメモです。「どうしたら筋トレが成功するのか?」という問いに対する、僕なりの答えが書いてあります。筋トレを始めたい人、始めたけど挫折してしまった人の役に立てたら嬉しいです。ちなみに、主に想定している読者は「人よりちょっとマッチョになりたい、忙しいビジネスパーソン」なので、人によっては参考にならない話もあるかもです。まあ気軽に読んでください。
念のため言っておきますが、僕はボディビルダーのようなムキムキのマッチョではないですし、ここで脱いだ体の写真を見せるつもりもないです。ここで脱いだ方が説得力が上がるのは僕も分かっていますが、まだそれは無理です(肉体的にも、精神的にも)。そこは勘弁してください。
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結論
最初に結論からです。ポイントは以下のとおりです。
- 絶対にプロテインを飲む
- ジムではなく、家で筋トレをする(まったく運動経験がない人は、最初だけジムに入る)
- 種目を増やさない(まずは腕立てとスクワットだけで十分)
順に説明していきます。
なぜ筋トレに挫折するのか
まず、なぜ筋トレに挫折するのかをハッキリさせておきましょう。これは分かりきっていて、筋トレをしても筋肉がつかないからです。せっかく時間やエネルギーを投資しても筋肉がつかなければ、いつかはやる気がなくなりますよね。
逆から言えば、筋肉さえつけば筋トレは続きます。
筋肉がつくことで、モテる、疲れにくくなる、自分の体つきを好きになる、人にナメられなくなる、といったメリットが生まれます。このメリットさえ体感できれば、筋トレは続くはずです。これらのメリットは、ちょっと筋トレする苦労をはるかに上回る利益があるからです。
というより、このメリットが体感できた後で筋トレを止めてしまう人は、何をやっても筋トレを続けることは不可能でしょう。筋肉がついても筋トレを続けられないなら、その人には筋トレを頑張る理由が存在しないということだからです。
つまり、筋トレを成功させるためには、さっさと筋肉をつける必要があります。「筋肉がつくことが筋トレの成功なんだから、話が逆だろ」と思うかもしれませんが、そうではないのです。
本を読んだり、他人から影響を受けたりして発生した「筋トレを頑張るぞ!」という最初のやる気は、いつかは絶対に枯渇します。人間は具体的なメリットを体感できずに頑張り続けられるようにはできていないからです。最初のやる気が枯渇するまでに給油する必要があり、その給油とは「筋肉がついたことで、XXという良いことがあった」という具体的なメリットに他なりません。
というわけで、筋肉がつくかどうかが、筋トレが続くかどうかの境目です。では、どうしたら筋肉がつくのでしょう?
筋肉がつく条件
筋肉がつく条件は、簡単に言うと以下の3つです。
- 負荷:筋肉に一定以上の負荷がかかること
- タンパク質:負荷がかかったタイミングで、体内に十分なタンパク質があること
- 頻度:①と②が、同一部位に対して週2回以上の頻度で継続して起こること
①と②に関しては常識だと思うので説明はカットします。③の「筋トレをする頻度」に関しては議論の余地がありますが、少なくとも「週1回で十分」と言っている専門家を僕は見たことがありません。つまり、最低で週2回です。興味がある人は、「筋トレ 頻度」あたりで検索をかけてください。
この3つの条件さえ満たせば、筋肉がつきます。ということは、筋肉がつかないなら、この3つの条件のどれかを満たしていないということです。では、どこに原因があるのでしょう?
筋肉がつかない原因①:タンパク質不足
僕の意見では、筋肉がつかない最大の原因はタンパク質不足です。もっと具体的に言うと、プロテインを飲まずに筋トレをしているのです。
まずは以下の表を見てください。
(出典:『新版 図解 スポーツコンディショニングの基礎理論』)
見てほしいのは、上から4行目です。このように、筋肉をつけたいときには「体重 ✕ 1.6-1.7(g)」のタンパク質が必要とされます。ただ、この数値は確定的なものではなく、2倍くらいと主張している人もいます。覚えやすいので、以降は2倍でいきましょう。
つまり、筋肉をつけたいなら、毎日「体重 ✕ 2(g)」のタンパク質を摂取している必要があります。体重60kgの人なら、120gですね。
では、僕たちは通常の食事からどれくらいのタンパク質を摂取しているのでしょう? 以下のグラフを見てください。
(出典:平成25年国民健康・栄養調査の結果概要)
このように、僕たちが通常の食事から摂取するタンパク質は、平均で1日あたり70g前後です。つまり、通常の食事だけでは、筋肉をつけるのに十分なタンパク質は摂取できません。ということは、摂取する栄養を見直さずに筋トレをどれだけ頑張っても、ほとんど無意味だということです。
ここからは2つのオプションがあります。①通常の食事を抜本的に見直すか、②プロテインを飲むかです。
ただ、①を実行することは現実的ではありません。食品ごとのタンパク質量を覚え、それを毎回の食事で実践するのは至難の業です。そもそも、自炊をしていない人も多いでしょう。外食では、まだまだタンパク質の多いメニューを見つけるのは難しいです(最近増えてきてはいますが)。また、これをやろうとすると食費が増えます。タンパク質を多く含む食材(肉や魚)は、炭水化物(米やパスタ)よりも高いからです。
結局、現実的な選択肢として残るのは「②プロテインを飲む」だけです。プロテインを飲まなければ、筋肉をつけるのに十分なタンパク質は確保できません。そして、体内に十分なタンパク質がなければ、筋トレをしても筋肉はつきません。
つまり、プロテインを飲まずに筋トレをするのは無意味です。プロテインを飲まずに筋トレすることは、出題される科目や出題形式を調べずに試験に臨むようなものです。こんな態度で結果が出るわけがありません。最短で結果を出したいなら、プロテインを飲むしかないです。
今になって考えると、僕が過去に2回筋トレに失敗した原因は、プロテインを飲んでいなかったからです。恥ずかしい話ですが、子供のころに聞いた「プロテインを飲むとEDになる」という都市伝説が尾を引いており、どうしてもプロテインを飲めませんでした。結果として筋トレをしても筋肉がつかず、いつの間にか筋トレを止める、ということを繰り返していました。3回目にしてプロテインを飲み、筋トレをする→筋肉がつく→もっと筋トレをしたくなる、のサイクルを回すことができました。
プロテインに副作用はあるのか
これは声を大にして言っておきたいのですが、プロテインを飲んでもEDにはなりません。未だにこの都市伝説を信じている人は少ないと思いますが、とにかく大丈夫なので安心してください。
というより、プロテイン特有の副作用というのは存在しません。プロテインはただのタンパク質で、タンパク質をどれだけ摂取しても害はないというのがUSDA(アメリカ合衆国農務省)の見解です。
(出典:Dietary Reference Intakes)
もちろん、「タンパク質の過剰摂取には副作用がある」と主張している人も世の中にはたくさんいます。ただ、僕の調べた範囲では、説得力のある根拠でそれを主張している人は存在しませんね。そもそも、僕たちが猿の時代には葉や昆虫を主食にしていたわけで、その主な構成成分はタンパク質です。タンパク質が人体にとって悪影響があるというのは無理筋ではないかと僕は思います。
(2021年7月9日追記) 以下のビデオによると、1日に体重×2(g)以上のタンパク質の摂取は腎臓に悪影響を与えかねないとするエビデンスが出てきたようです。
以下の記事も参考になります。 When it comes to protein, how much is too much?
さすがに、筋肉をつけるために腎臓を傷めては本末転倒なので、上記の「筋肉をつけたいなら、毎日「体重 ✕ 2(g)」のタンパク質を摂取している必要があります」はギリギリを攻めすぎですね。身体に関わることなのにざっくりした数字を使ってしまい申し訳ありませんでした。
やはり、「体重 ✕ 1.6-1.7(g)」くらいを目安にした方がよいでしょう。以降の内容はこの情報を受けて修正してあります。
プロテインの飲み方
次に、プロテインの飲み方を説明しておきましょう。
まず量ですが、厳密にやりたいなら自分の普段の食事のタンパク質量を計算し、そこから不足分をプロテインで補うしかありません。
ただ、「自分の普段の食事のタンパク質量を計算する」って、あまり現実的じゃないですよね。僕としては、1日に1回、30-40g程度のプロテインを摂取すればよいのではないかと考えています。朝食をプロテインシェイクにしてしまうのがオススメです。
通常の食事をしている人であれば、これで体重×2(g)を超えることはないでしょう。もちろん、実際の数字は自分の体重なども加味して調整してください。
というわけで、プロテインを飲みましょう。これは筋トレを成功させるための絶対条件です。
筋肉がつかない原因②:頻度が足りない
プロテインさえ飲めば、タンパク質の問題は解決します。あとは、負荷と頻度の問題ですね。どこに問題があるのでしょう?
僕の仮説では、原因は頻度です。週に2回以上、同じ筋トレをしていないのです。これは仮説というか、確信に近いですね。
冒頭で触れましたが、筋肉をつけるためには週に2回以上、同じ筋トレをすることが必要です。週に1回では足りません。
そして、この「2回」は間隔が離れている必要があります。筋肉にはトレーニング後に「超回復」をするための期間が必要で、これが48-72時間程度と言われているからです。つまり、「月曜日・火曜日」と筋トレするのはダメで、「月曜日・木曜日」のように筋トレする必要があるわけです。
ここから何が言えるかというと、平日に1日は筋トレ日を設ける必要があるということです。週末のどちらかを筋トレ日にするとしても、もう1日はそこから2日は離れている必要があります。それは平日ですよね。
そして、これが難しいんですよ。忙しいビジネスパーソンにとって、平日の筋トレをルーチンに組み込むのは大変です。毎日遅くまで働いていれば、そもそも筋トレなんてやる気が起きませんからね。それ以前に睡眠を優先したいものです。また、筋トレの翌日はどうしても疲れが残ります。翌日に大きい仕事がある場合は、筋トレを避けたくなっても不思議はありません。
結局、このような要因のせいで、忙しいビジネスパーソンのトレーニング頻度は「週末に1日はトレーニングする。かなり暇だったら、平日もトレーニングする」というところに落ち着きがちです。そして、これは挫折への一本道です。既に述べたとおり、週に1回では足りないからです。何とかして、平日にトレーニングするしかありません。
どうしたら平日にトレーニングできるか
では、どうしたら平日にトレーニングできるのでしょう? こればっかりはケースバイケースですが、僕の提案は家で筋トレをすることです。もう少しスタンスを取ると、筋トレが軌道に乗るまでは、ジムには行かない方がいいと思います。
まずは以下の表をみてください。筋トレをする場所としての家とジムを比較しています。
上から説明すると、パフォーマンス(筋トレの効果)が高いのはジムです。ジムには高重量の重りがありますし、最初はトレーナーが筋トレのやり方を教えてくれます。そもそも、マシンならフォームが固定されるので間違ったフォームになる心配すらありません。
反対に、コストでは圧倒的に自宅に分があります。それも時間と費用の両面でです。時間という点では、筋トレをする時間以上に追加でかかる時間は一切ありません。費用という点でも、最初に器具を揃える必要はありますが、それすらジムの会費1ヶ月分程度です。
他にも色々と書いておきましたが、それは表を見てください。僕がここで言いたいのは、この中で最も重要視すべきなのは時間的コストだ、ということです。
既に述べたように、平日に筋トレすることの最大の障害は忙しさです。ならば、忙しくても筋トレできるように、筋トレの時間的コストを下げるしかありません(忙しさ自体を減らす方法もありますが、それはここでは考えません)。そして、時間的コストが低いのは家です。これが僕が家で筋トレすることをオススメする理由です。家に帰って着替えたら、そのままの勢いで腕立てをする。これなら平日でもできるでしょう(実際のタイミングはお任せします)。
家でも(家の方が?)パフォーマンスは出せる
「パフォーマンスはどうするんだ」というツッコミがあるかもしれません。特に、少し筋トレに関して勉強した人なら、「マックスで7-10回程度の重量を扱うのが最も効率的だけど、こんな重量は家では用意できない」と思うかもしれません。
ハッキリ言って、こんな心配は無意味です。まず、20kgのダンベルセットを買えば、家でも相当にきついレベルの筋トレが可能になります。ダンベルすら買わなくても、「自重で限界まで」を3セットもやれば、間違いなく翌日は筋肉痛です。ならないなら、限界までやっていないだけですね。あと3回やりましょう。重量が云々という話は、腕立てを50回やっても筋肉痛にならなくなってから考えればいい話です。
というより、「ジムでは色んなトレーニングができてしまう」というのが、僕が家をオススメするもう一つの理由です。筋肉をつけるための行動に集中できないのです。
ジムに行くと、「せっかくジムに来たし、色々やっていくか」という気持ちになりますよね。わざわざ時間と金を払ってジムに来ているのだから、この気持ちは当然です。結果として、色々なマシンを触り、ランニングマシーンにも乗って、最後は水泳までやってしまう。似たような経験がある人も多いんじゃないでしょうか。
そして、これは筋肉をつけるための行動とは言えません。体力は使ったかもしれませんが、筋肉が成長するだけの負荷をかけていない可能性が高いのです。色んな種目をこなそうと思えば、それぞれの種目にかける時間は減ります。しかし、筋肉をつけるために必要なのは、とにかく同一部位を追い込むことです。色々やるよりも、腕立てを3セットやらなければなりません。
もちろん、ジムでもベンチプレスだけを3セットやって帰ればいいのかもしれませんが、初心者がそれをやるのは心理的に難しいと思います。結局、「ジムに行く度に色々とやってはいるものの、翌日に疲れだけが残って、自分の体は変わっていない」ということになりがちです。こうなるくらいなら、家で限られた種目だけを徹底的に行い、1つの部位で筋肉をつけるプロセスを回したほうがいいでしょう。
まとめると、僕のオススメは「家で」、「限られた種目だけを」、「週に2回以上の頻度で」行うことです。プロテインを飲んだ状態でこの行動を繰り返せば、必ず筋肉はつきます。ジムに行くのを検討するのは、それからでも遅くはないと思いますね。
オススメ種目
最後に、オススメ種目を書いておきます。僕のオススメは1位がスクワット(尻)で、2位が腕立て伏せ(胸)です。本当の1位は懸垂ですが、懸垂はチンニングスタンドが必要です。まずはスクワットと腕立てで結果が出てからでいいでしょう。
理由はシンプルで、この2種目を頑張れば、見た目がハッキリと良くなるからです。胸板が厚い男性はモテるし、女性ならバストアップになります。尻も似たようなもので、プリケツは正義です。つまり、この2種目は筋トレのメリットを感じやすいのです。
反対に、腹を鍛えるのは悪手としか言えません。「シックスパック」というと聞こえはいいですが、シックスパックにするには筋トレよりも体脂肪のカットが必要です。しかも、脱いだ腹を見せる状況はそうそうありません(というより、見せる状況なら勝負はついている)。服を着た状態であれば、胸さえ鍛えてあれば腹は目立ちません。まずは胸や尻を鍛えるべきで、次に肩や背中、腕でしょう。腹は最後ですね。
また、スクワットや腕立て伏せでは、尻や胸以外の筋肉も鍛えられます。これらは「コンパウンド種目」といって、目的の部分以外の筋肉も巻き込む種目だからです。詳しく知りたい人は「ビッグ3 筋トレ」で検索してください。
ではでは、とりあえずこんなところです。どこかに1つでも参考になる部分があったら嬉しいです。また、自分の学びの整理のために書いた部分もあるので、間違いがあったら指摘してもらえると助かります。筋トレ頑張りましょう!